30周年スペシャルインタビュー
ヨネックスと30年、
限界突破に挑み続けるライダーたち
渥美枝里
2000―2012シーズン、女子スノーボードクロスでPSA ASIAツアーに参戦。IAT CUPや秘境南郷など主要大会へ連続出場し、プロツアーランキング2位など、接触とスピードがぶつかり合う舞台で攻めの滑りを披露。現在は元JSBA公認A級コーチとして、幼少期の平野流佳をはじめジュニア世代を育成する、次世代強化を支える中核的存在。
数々の大会で培った経験を糧に、今は指導者として次世代の育成に力を注ぐ渥美枝里。長年ヨネックスのライダーとして歩んできた実績は、彼女の大きな支えであり、育成の現場でも欠かせない原動力となっている。選手の成長を見守りながら、自らも進化を続けるその姿勢と想いを、彼女自身の言葉で語ってもらう。
普段はどのような日常を過ごし、スノーボードと関わっていますか?
普段は2人の息子を育てながら、美容関係の会社を経営しています。休日や雪が降った日にはスノーボードを楽しみ、ヨネックスのレッスン会ではコーチとして参加しています。自社で開発しているアウトドア専用日焼け止めのテストでも雪山に行くことがあり、スノーボードは、趣味と仕事の両面で関わる大切な存在です。
指導者への転機となった出来事は?
現役時代、バックカントリーで木に衝突し、顔面陥没骨折の手術を受けたことが転機となりました。自然を相手にするスノーボードの危険性を身をもって知り、次世代の子どもたちに技術や楽しさだけでなくリスクも伝えたいという想いが芽生え、キッズ向けのスノーボード教室「TREASURE CAMP」を立ち上げました。
現役時代のキャリアの分岐点は?
クロスのプロ制度が始まった初年度に、天神平で開催されたマスターズでプロに昇格したことです。プロ昇格をきっかけに「競技」として真剣に向き合うとともに、フリーライディングだけでなくハーフパイプやパークを、誰よりも練習したことを覚えています。オールラウンドにこなしてきたことで、今でも開発テストや指導の現場に呼ばれる礎となっていると感じています。
教え子がプロとして活躍し始めたときの気持ちを教えてください。
教え子たちがプロとして活躍し始めた頃、私は出産・育児のため一度雪上を離れていました。そのため、現地で直接声をかけることがほぼできませんでしたが、かつて小さな身体で一生懸命練習していた子どもたちがプロとして大舞台で堂々と戦う姿を見て本当に誇らしくわが子のように感動しました。優勝インタビューで、直接感謝の言葉をもらったときには、思わず涙があふれました。コーチとしてこれ以上ない瞬間でした。
指導者として直面した最大の壁と、そこから学んだ教訓とは?
最大の壁というより、常に向き合ってきたのは、ジュニア世代を指導する上での保護者の方々とのコミュニケーションです。ご家庭ごとにスノーボードへの考え方が異なる中、指導方針とのすり合わせには難しさを感じることもありました。
まだ幼くこれから上を目指そうかな、という世代の子供たちには「楽しいスノーボード」から「やらされるスノーボード」になってしまうことが多々あります。
結果論ではありますが、今、日本や世界のトップに立っている子たちの共通点は、親にやらされるのではなく、自らの意思で心から楽しんで取り組んでいたということです。
子供ですから、時にはやりたくない、いう時もあったでしょう。でも、そんなとき無理やり行かせるのではなく、そっと見守る強さと、必要なときに背中を押し勇気づける親御さんの姿がありました。
この経験から技術やメンタル面の指導はもちろんですが、子どもたちが自分らしくスノーボードと向き合えるよう、保護者と寄り添いながら支え、上達を目指すことの大切さを学びました。これは今、自分の子育てにも深く活きています。
ヨネックスとの出会いと、共に歩むことで自分のスタイルがどう進化しましたか?
岐阜県にある所属ショップ「FREAK」の早川社長に推薦いただき、ヨネックスのボードと出会いました。当時は珍しかったフルカーボンの板。その独特な反発と、クセになるような乗り心地に衝撃を受けました。
その後、ヨネックス初のスノーボードクロスライダーに選ばれた際に、「1シーズンに一度も表彰台に立てなければ即引退」と決意するほど競技への覚悟が深まりました。クロスの成績だけは絶対に落とさないという信念が、私の競技人生を支えてくれました。
ブランドと共に商品開発することで、自分のライディングスタイルはどう変化した?
年齢を重ねても守りに入らず、様々な地形を滑ることで、ユーザー目線でギアを意識するようになりました。今の自分だからこそできる滑りがあると実感しています。
ヨネックススノーボードの中で、自分のスタイルに合うのはどんなところ?
30年近く前から使い続けているので、やはりカーボンとアラミドハニカム構造の板が好きです。カーボンならではの独特な反発力とトーションバランスの絶妙さは、フリーライディング好きの私にとって理想的。ターン後半の伸びや、踏み込んだときに裏切らない反発があり、どんなバーンでも安心して滑ることができます。ハニカム構造については、昔「こうやって軽量化しているのか!」と感動したのを今でも覚えています。
ヨネックスに向けて、30周年のメッセージをお願いします。
ヨネックススノーボード30周年おめでとうございます!ヨネックス一筋28年、私のスノーボード人生はヨネックスの技術とサポートに支えられてきました。間もなく50歳を迎えますが、ヨネックスのテクノロジーの進化のおかげでこの30年筋力は衰えても滑りが衰えている実感はありません!
これからも一緒に素晴らしい歩みを重ねていけることを楽しみにしています。80歳までよろしくお願いします!